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ヨブきこうえん
ヨブ記講演
内村 鑑三
丸の内の大日本私立衛生会館における内村聖書研究会においてのヨブ記講義、1920(大正9)年4月25日~6月27日、9月12日~10月10日、10月24日、11月21日、12月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 92,828 字 · 185 页
海なる嬰児が母の胎内より湧き出でて、浩々蕩々まさに全地を蔽わんとした時、戸を以てこれを閉じて汎濫を防ぎしは誰であるかと八節は問う。けだしこの御しがたき力を制御せしは神に外ならずとの意である。次に九節はこの海という嬰児に対して「雲を以てこれが衣服となし、黒暗を以てこれが襁褓となし」たのは神であるというのである。雲は海を蔽う衣であり黒暗はこれを包む襁褓であるとは、まことに絶妙なる形容であると思う。そして単に形容たるのみならず、恐くは渺茫たる大洋の中に幾日かを送る航海者に取りては、ヨブ記のこの語が宛然に事実なるが如く感ぜらるるであろう。昼は満天の漠々たる雲が海を蔽い夜は底しれぬ暗黒が海を包む光景を親しく観て、この形容の荘大、優美にしてかつ如実なるを悟り得るのである。
◯そしてこの御しがたき奔放自在の海に対して「法度を定め関及び門を設けて」、これに向いて「ここまでは来るべし、ここを越ゆべからず、汝の高浪ここに止まるべし」と命じ給いしは実に造物者なる神である。海がその蔵する無限のエネルギーに押し立てられて、沖天の勢を以て陸に向って押しよせる時は、あたかも陸を一呑みにするかと思わるるほどである。