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ふゆがれ

冬枯れ

徳永 直

「中央公論」1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页

青空文庫

二

こッちに大嵐があったという事は風の便りにきいていたが最近はまるで知らなかった。幾田君は質屋の倅で、このまえ帰郷したときも二三度たずねてきたが、文化サークルのメンバーでおとなしい青年だった。

「世間体が悪かてち、葬式もこッそりでしたばい」

「幾田君だけか、F君は?」

「はァ床屋の息子さんなァ、あの人も一寸引張られなはッたげな」

「それから」

「ようと知らんたい、まだ新聞にも出ンとだけん」

妹は戸外から馬の鼻づらを引寄せた百姓が、店先に入ってくると面倒くさそうに話を打ち切ってしまった。

鷲尾は苛らだった顔色で、懐中の子供を揺すぶり歩きながら、裏口の方をセカセカとのぞいてみる。ひくい灰色の雲の中に太陽がかくれてしまうと、足下の陽だまりはすッかり消えうせて、凍りついた地べたをさむざむと風がふいた。

「おい、まだグズグズしてるかァ」

到々我慢しきれぬように、裏口でまだ洗濯の終らない女房へむかってドナリ出すのだった。

二

鷲尾は帰郷するとすぐ、K警察へハガキを出しておいた。――家庭的用件ノタメ帰省候間、此段御届及候也――。

ハガキをポストにいれてしまってから、それが少しも不自然でないのに自分でおどろいた。