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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
「話して御覧なさい」
とニコル先生は未だ赤羽君を睨んでいた。
「ミスター・アカバネは先生に失礼を申上げたのでありません。アカベーンの実例をお目にかけたのです。元来アカベーンは人に拒絶を与える時の表情でありまして、極く親愛の間柄に用います」
と立花君は比較的流暢に説明した。ニコルさんは納得が行ったらしく、
「分りました。ミスター・タチバナ、有難う」
とお礼を言って、もう一方赤羽君に、
「ミスター・アカバネ、君のアカベーンの実例によって得るところがありました。有難う」
「ジス、日本、アカベーン」
「もう宜しい」
「ジス、私、アカバネ」
「分りました」
「はい」
と赤羽君が坐った時、一同腹を抱えて笑い出した。
授業が終ってから、
「日本アカベーンはひどかったね」
と野崎君が諢かった。
「ジャッパン・アカベーンの方が宜かったろう」
と赤羽君は平気だった。こんな野郎が何百万の成金になったのだと思うと、世の中も変なものだ。
このアカベーン事件には余談が二つある。一つはニコル先生が早速実地に応用したことだ。或日猪股先生が英文学の時間に、
「諸君は西洋人に嘘を教えて担いじゃいけない」