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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
得意と失意
式を休んで皆々に迷惑をかけるもの、これから先もあります。差上げると、総理、監督出来ません」
「…………」
「差上げません。その代り、今、この窓から捨てます」
「…………」
「紙屑拾い、泥棒でありません」
「はあ」
「差上げません。捨てます。分りましたか? 紙屑拾い、泥棒でありません。早くお帰りなさい」
と命じて、総理は立ち上った。私達はお辞儀をするが早く、校庭へ下りて待っていた。二階の窓が開いて、卒業証書が三枚ヒラ/\と舞って来た。
得意と失意
私達は正月頃から心掛けて伸した髪の毛を卒業試験間際から分け始めた。皆頭をテカテカさせていた。赤羽君は、
「頭がねばって勉強が出来ない」
と言った。
「見給え。帽子がこんなになってしまう」
と持て余しながらも、散歩に出る度にポマードを買う。
「一体君は何れぐらいつけるんだい?」
と訊いたら、
「あれは一日に一個つけるものだろう?」
と平気で答えた。極端な男だ。皆と一緒に卒業出来ないことが分ると直ぐ、又以前の坊主刈に戻って、
「おれは上せ性だ。髪を長くしていたものだから、勉強が出来なくて、つい不覚を取ったんだ」
と説明をつけた。以来、決して髪を伸さない。