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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

第一印象

「それじゃ考えものだぞ」

「いけない/\」

「ハッハヽヽヽ」

「君、富士山が見える」

と私は指さした。

その日、私達が事務室へ行って入学金と授業料を納めているところへ、又一人の同級生が着いた。此奴が現在の成金赤羽君だった。猪股先生は私達を紹介して、

「新入生は君達三人きりらしい。尤も中学部から来るのが六人ある」

と言った。

「私は群馬県の産、赤羽明と申します。何分宜しく」

と赤羽君は鄭重にお辞儀をした。

「宜しく」

と野崎君は肩を怒らせて睨みつけた。悪い癖だ。直ぐに喧嘩を売りかける。

第一印象

群馬県の産、赤羽君は矢張り寄宿舎へ入って、私達の隣室に落ちついた。荷物を片付けると直ぐに出て来て、

「好い学校ですな。僕は西洋館は初めてです」

とニコ/\した。

「群馬県の学校は藁葺きですか?」

と野崎君が冷かした。

「学校は皆西洋館ですけれど、寄宿舎の話です」

「僕達の方じゃ寄宿舎も皆西洋館です」

「何処ですか?」

「静岡県です」

「随分進んでいるんですね」

と赤羽君は争わなかった。

「新入生が僕達三人きりとは心細いですな」

と私は話題を変えた。野崎君は喧嘩を売る気だ。始まれば私が同県人だから加勢につくと信じている。