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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

これに日本語を教え給え。報酬は幾らくれるか分らないが、学資ぐらいは取れる」

「有難うございます」

と私は即座にお受けをした。

それと殆んど同時だったと記憶するが、野崎君は図書館の係りを拝命した。

「商館の口があるまで繋ぎさ」

とこれも大喜びだった。次に赤羽君が呼び出された。

「何の口だろう」

と大に期待して行ったら、

「学園には差当りもう仕事がないから、待っていても駄目です。君は寄宿舎で煙草を吸うそうだが、怪しからん。在学生の監督上困るから兎に角早速引き払ってくれ給え」

という申渡しだった。

「人を馬鹿にしていやがる」

と赤羽君はカン/\に憤って、その日の夜行で神戸へ立った。叔父さんが運送業をやっている。それを頼って行ったのだ。この男が後日成金になって十七万円の講堂を寄附した当座、明治学園では神さまの次が赤羽さんのようだった。尤もジョンソン博士も猪股先生も死んでしまったから、学風が幾分変ったのだろう。

私はロビンソン氏に日本語を教え始めた。日本語だから訳はなかろうと思って取りかゝったが、やって見ると、案外だった。一々英語で説明するのだから骨が折れる。時には何を言っているのか自分ながら分らない。