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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

と言う。

「級長」

「…………」

「呼んでいるのに何故返辞をしないんだ?」

と今度は責任を問う。癪に障るけれど仕方がない。

次に訪れた時、占部さんは、

「友さん、聖書をお読みになりましたか?」

と訊いた。

「はあ」

「何うでした?」

「能く分りませんが、先生が仰有るから堪忍しました」

と私も祈って貰った手前、気の毒になって、精々教訓に従う積りだった。

「それは宜かったです。心持がカラリと晴れたでしょう?」

「いゝえ、国分丈けは別です。彼奴は発頭人ですから、何うしても堪忍出来ません」

「他の三人はもう宜いんですね?」

「はあ」

「それじゃもう一息です」

と占部さんは喜んで、少時話した後、

「友さん、今日はお祈りを教えてあげましょう。私の言う通りを後について言って御覧なさい。屹度気分が清々しますよ」

と勧めて、承諾も待たずにもう跪いた。私は今更仕方がなく、占部さんの後について口真似をした。今考えて見ると主の祈りだった。大体申分なかったが、

「我等に罪を犯すものを我等が赦す如く……」

というところ丈け気に入らなかった。誰が赦すものかと思いながら祈っているのだから、神さまも驚いたろう。