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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页
見給え、震災で崩れてしまった」
「それは仕方がない。震災は世間並みだ」
「取り片付けに五千円かゝっている。僕はあの時、一個人の資格で赤羽のところへ談判に行ったんだ」
「ふうむ」
「寄附した以上は早速建て直す責任がある。それを力説したんだが、奴、言を左右に託して取り合わない」
「それは君が少し無理じゃなかろうか?」
「何故?」
「あの頃の赤羽は好景気時代の赤羽と違う。大戦後のガラを食って、財産が三分の一になった上に、震災でひどい目に会ったんだからね」
「ガラって何だい?」
「知らないのかい?」
「僕は神の道を説く牧師だよ」
「仕方がないな。ガラはガラ落ちさ。急に相場が下るんだ。財産が三分の一になったところへ震災で痛手を蒙っているから、迚も建て直しなんか出来ない」
「建て直しが不承知なら、直ぐに取り片付けろと僕は忠告してやった。寄附した以上、壊れたら、それ丈けの責任はあるぜ」
「さあ」
「赤羽は兎に角考えて見ると言ったよ」
「その筈だよ」
「しかし卑劣にも責任を負わない。復興資金として五百円寄附したばかりだ。学園は彼奴の為めに五千円、その中五百円入れたから、四千五百円取り片附けの費用を負担している」