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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

と私が又相槌を打った。

「然うです。皆面白い男ですよ」

「残余は何うしたんですか?」

「早稲田と慶応へ大分入りました。アメリカへ行くものもあります」

「はゝあ」

「三四人官立を受けますから、九月には落武者が帰って来るかも知れません」

「落武者って何ですか?」

「一高や高商で弾ねられた怪我人ですよ」

「成程」

「耳が痛いね」

と赤羽君が野崎君を見返った。

「実は僕達も去年の落武者ですよ」

と野崎君が頭を掻いた。二人とも案外無邪気なところがある。

「河原君は信者でしょうね?」

と安部君が訊いた。前後の関係から落武者は何うせ信者でないというような意味にも取れた。

「はあ」

「教会は何処ですか?」

「郷里です」

「お郷里は?」

「静岡県の○○町です」

「いつ洗礼をお受けになりました」

「中学三年の時です」

「それじゃ僕と同じことです。神学校へお入りですか?」

「いゝえ。あなたは?」

「未だ定めていませんが、入りたいと思っています」

「僕は中学校の先生が志望です」

「それも宜いでしょう。こゝを出た人は大抵英語の先生になっています」

「しかし資格がないんですってね?」

「さあ」

「教員免状が貰えないんですって」