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なんぼく

南北

横光 利一

「人間」1921(大正10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,591 字 · 40 页

青空文庫

」

「そうかな、大きに大きに。」

「塩が足らんだら云いや。」

「結構結構。」

安次は茶碗からすが眼を出して口を動かした。

「こりゃええ、麦粉かな?」

「こりゃ麦や、塩加減はええか?」

「上加減や、こりゃうまい、お霜さん、わしは酒加減はよう味るぞな、一時亀山でや、わしがおらんと倉が持ていでのう。」

勘次は安次を待つのが五月蠅かった。ひとり出かけて行って秋三の狡さを詰ろうかとも思ったが、それは矢張り自分にとって不得策だと考えつくと、今更安次を連れて来てにじり附けた秋三の抜け目のない遣方に、又腹立たしくなって来た。

安次は食べ終ると暫く缶詰棚を眺めながら、

「しびは美味いもんや。」とひとり言を云った。

煙は又風呂場の方から巻き込んで来た。お霜は洗濯竿の脱れた音を聞きつけて立ち上った。

「お霜さん。煙草一ぷく吸わしてくれんかな。」

「安次、行くぞ。」勘次は云った。

「お前ひとりで行って来てくれんかよ。」

「お前、行かにゃ何んにもならんが。」

「もうお前、ひ怠るてひ怠るて歩けるか。」

「たったそこまでやないか、向うまで行ったら締めたもんや。お前図々しい構えてりゃことがあるかい。」

「堪えてくれ。