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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
在线阅读直木 三十五《南国太平記(なんごくたいへいき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 493,291 字 · 991 页
駕屋は、駕を、真横担いにして、一足ずつ降りかけた。
「さあ、但州、何うだの」
「さあ、急いだら、然し、何うかのう」
益満は、手早く、金を取出して
「降りる。駄賃は、町までのを、これは、別に口止料」
と、いって、金を差出して、片手で駕をたたいた。
「降りて走ろう。走れば、間に合うであろう」
益満は、駕を出て、金を渡しながら聞いた。
「ええ、それなら、十分に。旦那、こう多分に頂かなくても、喋りゃ致しませんよ――」
「貴公達は、賽ノ河原辺で宿をとるがよい。某は関所を、今日のうちに通らねばならぬ。それから、もし、仙波の妻子が参ったなら、某は仙波へ、急を告げに参ったが、明朝すぐに引返すからと、申し伝えておいてもらいたい」
口早に、こういうと、益満は、駕屋の礼を後に、急坂を走り降りて行った。
雲が少しずつ暗くなりかけて、水色の沈鬱な湖面は、すっかり夜の色らしくなりかけてきた。
箱根の関所は、冬も、夏も、暮六つに、門を閉じる慣わしであった。益満は、一足早く旅へ出た仙波父子へ、討手のかかっていることを告げてやりたいと、湖を右に、杉木立の深い、夕靄の薄くかかった中を、小走りに急いだ。