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みょうじのはなし
名字の話
柳田 国男
「斯民家庭 第二編第七号、第九号、第一〇号、第一一号」報徳会、1911(明治44)年7月1日、9月1日、10月1日、11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,823 字 · 46 页
家紋の数はあまりたくさんはない
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家紋の数はあまりたくさんはない
話がここまで進むと、ついでに少しく家紋のことを述べる必要がある。後世の家紋は、あるいは主君から拝領したもの、あるいは物好きから新たにこれを定めたものもあるのみならず、全然異なる家筋で同じ紋をつけることもあれば、一概に紋から家の先祖を定めることもできないが、中世の家族制度の特色、すなわち移住のために家号を変えてゆくことと、比較してみるとよほど面白い趣味がある。
諸家の紋帳の中でいちばん古いのは、『群書類従』に出ている「見聞諸家紋」であるが、これはその数がはなはだわずかである。徳川時代の『武鑑』や「紋帳」に顕われている紋の数も、その数が五六百を超えないのである。今日でも稀には染物屋の難儀をするような紋もないではないが、だいたい紋書きが見たこともないという紋は、一生の中に七つか十しかないそうである。言を換えて言えば、源平時代の家号文化がほとんと極まるところを知らざるありさまであったものが、ある特種の原因から逆戻りをして、やや統一の傾向を示したのと同じように、紋もまたいったん無数に増加して行こうとしたものが、ある程度に達して後再び減少の傾向を示したのである。