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みょうじのはなし

名字の話

柳田 国男

「斯民家庭 第二編第七号、第九号、第一〇号、第一一号」報徳会、1911(明治44)年7月1日、9月1日、10月1日、11月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,823 字 · 46 页

青空文庫

二字免許の制度の由来

な移住者もある。いわんや奥州の棚倉などいうような所へ、懲戒的に国替させられるような中大名にあっては、その藩士の漂泊生活というものは、明治の今日の軍人や裁判官も三舎を避けるくらいであった。これに至ってか名字と土地との関係は全然断絶してしまって、ついに現代のごとく数十人の太郎次郎を区別する、符号のごとくなってしまったのである。

しかし彼等自身においては多くの場合、生国を忘れるようなことはなかった。徳川末期の『武鑑』を見ても、江戸の旗本の名の下に生国三河と書いてあると同じく、彼等は決してその本国を忘却しなかった。しかのみならず数代以前に別れて来た郷里の本家とは、きわめて血の薄くなるまで音信を絶たず、よくよく双方いずれかが零落をせぬ限りは、名字の地または奉公先を互いに記憶しておったのであります。

二字免許の制度の由来

村々の農夫の歴史は文字に伝わっておらぬけれども、存外続いて久しいものであるらしい。彼等は戦乱に追われ、または天災に遭遇しても、真っ先に居村に引き返して荒地を再墾することを勤めたらしい。今日の新村というのは、よくよく以前から人の耕さなかった土地に外部から移住したものである。