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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

小川という男が何が為にあの部屋へ忍び込んだのか。誰に殺されたのか。その死体はどこへ行ってしまったのか。また、先程の、不思議な電燈の明滅、明智の消失と彼の不意の出現など。

明智はその秘密を、既に探り得た様子だが、なぜか彼は、それについて一言も語ろうとはしないのだ。まだ語るべき時期でないのかも知れぬ。で、書斎の秘密は、そのままそっとして置いて、さしずめ心掛りな、明智小五郎の女助手の行方について、物語を進めなければならぬ。

さて、客間につれ込まれた、小林少年が、林檎のような頬を、一際赤らめ、息をはずまして語った所によると、……

夕方五時頃、明智からの使だといって、一台の自動車が、文代さんを迎えに来た。

明智の筆蹟で、

「急用あり、すぐお出を乞う」

という簡単な手紙を持っていたので、彼女は別段疑う所もなく、その車に乗った。

だが小林少年は、虫が知らせたのか、昼間の賊の脅迫状や、明智が出がけに注意して行ったことが、気になって仕様がなかった。

文代さんをとめて見たけれど、取合ってくれないので、独心を痛めて、走り去る自動車を見送っていると、丁度幸いにも、そこへ一台の空タクシーが通りかかった。