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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
女探偵
賊はひょっとしたら、国技館を根城にして、恐ろしい悪事を企らんでいるのかも知れません。アトリエの死体群像といい、ここの二階の仏像といい、今また国技館の菊人形と、あいつの犯罪には、妙に人形がつき纒っている」
明智は非常に気掛りの様子で立上った。
「僕はこれからすぐ、国技館へ行って見なければなりません。あの殺人鬼は文代さんをどんな目に合わせているか、ひょっとしたら、もう間に合わぬかも知れません」
いいながら、彼は小林少年を従えて、もうドアの外へ出ていた。
「三谷さん。二階の書斎を注意して下さい。やっぱりドアを締切て、誰もあすこへ入らぬ様にして下さい。召使の人達にも決してあの部屋へ足踏みせぬ様、きびしくいい渡して下さい。悪くすると、人の命にもかかわる様なことが起るかも知れません」
明智は、見送る三谷と、廊下を歩きながら、繰返し繰返し、それを注意した。
女探偵
文代さんにとって、恋人明智小五郎の命令は、絶対のものであった。嘗て「魔術師」といわれた怪賊の毒手から、救われた恩義がある。その上に恋だ。
どういう訳で、何の目的で。そんなことは問う所でない。明智の命とあらば、火の中へでも飛込むのだ。