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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
奇妙な客
今にも思い出せそうで、なかなか思い出せぬのが、非常に不気味であった。
奇妙な客
茂少年が誘拐され、倭文子が行方不明になった翌日、主人のない畑柳家に、奇妙な客が訪ねて来た。
三谷は、一先ず下宿に引上げたし、変事を聞いてかけつけた親戚の者なども、帰ったあとで、邸内には執事の斎藤老人を初め召使ばかりであった。
警察では、無論両人の行方捜査に全力を尽していたのだけれど、何の手懸りもない、雲を掴む様な探しもののこと故、急に吉報が齎される筈もなかった。
例の呼出しの贋手紙にあった、北川病院を調べたことはいうまでもないが、予想の通り、病院はこの事件に何の関係もないことが分ったばかりだ。
奇妙な客が来たのは、その夕方のことであったが、今度の事件について、密々でお話したいことがあるというので、斎藤老人が、客間へ通して面会した。
客は、背広服を着た、これという特徴もない、三十五六歳の男で、小川正一と名乗った。が、斎藤がせき立てる様にしても、仲々本題を切出さぬ。つまらない世間話などを、いつまでも、繰返している。
しびれを切らして、倭文子の知人から、見舞の電話があったのをしおに、一寸中座したのが、間違いだった。