轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

ともすれば、文代に気づかれぬ様に、そこへ手をやって、何か中にあるものを確めて見る。

文代は、見ぬふりをして、ちゃんと見ていた。

若しやこの男、ピストルを持っているのではあるまいか。人工瀑布に水を上げる為のモーターポンプが、やかましく轟き渡っている中で、ピストルを打ったとて、誰も気づきはしないだろうと思うと、流石に薄気味悪くなって来た。

「ホウ、これは凄い」

男が驚きの声を上げたので、ふと見上げると、生茂った造花の桜の枝越しに、菊人形の狐忠信の青白い顔がすぐ頭の上に漂っていた。

「マア怖い」

文代は実際以上に怖がって見せて、マスクの男によろけかかった。

「怖がることはありません。人形ですよ。人形ですよ」

男は文代の背中に手を廻し、彼女を抱きしめる様にした。

「もういいんです。でも、本当にゾッとしましたわ」

文代は男から離れて、外套のポケットに入れた左手の先に、注意を集中した。

彼女は咄嗟の間に、男がポケットに忍ばせていたものを、抜取ったのだ。手触りで、ピストルでないことが分った。金属性の、シガレット・ケースを少し大きくした様な容れものだ。

相手に悟られぬ様、外套のポケットの中で、そのケースを開き、指先で探って見ると、水にひたしたガーゼ様のものに、ヒヤリと触った。