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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
最初の電話は、いま帰省中の、ある船会社の電信技師からであった。
「私の二階から国技館の丸屋根のイルミネーションがよく見えるのですが、今し方、あの電燈が変な風に明滅しました。お気づきでしょうか。難破船から救助を求める時に使うS・O・Sを三度も繰返したのです。電気係なんかのいたずらかも知れませんが、少しいたずら過ぎると思います。それとも何か特別の事件でも起ったのではありませんか。念の為に御注意します」
というのだ。
暫くすると、今度は水上署から、同じ様なお叱りの電話、続いて、誰かが報告したと見えて、所轄警察署からもお小言が来るという始末だ。
明智小五郎が到着して、支配人のS氏に刺を通じたのは、丁度その騒ぎの最中であった。
S氏は愈々ただ事ではないと、青くなって、兎も角も、有名な素人探偵を、事務室へ招じ入れた。
明智は委細を語って、一応配電室を検べて見たいと申出でたので、S氏は直接彼をそこへ案内したが、無論、その時分には、部屋は空っぽ、何の異状もない。
配電係を探し出して、明智自身で、根掘葉掘り、尋ねて見ると、遂に隠し切れず、妙なマスクの男に、多額の礼金を貰って、配電室の鍵を貸たことを白状した。