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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
アア、何という突飛なかくれがであろう。警察始まって以来、空中へ逃げ昇った犯人というのは、この怪物が最初であったに相違ない。
我々の知っている所によると、この賊は、義手義足をつけている筈だ。その不自由な身で、国技館の天井裏をはい廻るさえあるに、あの長い繩を空高く、どうしてよじ昇ることが出来たのであろうか。
おもうに犯人は、あの醜い容貌にかわる以前の正体を、見破られまいため、身体全体の格好を別人に見せるため、健康な手足に、にせの義手義足をかぶせていたのであろう。
それはとも角、国技館前は、瞬く内に、昨夜に倍した、恐ろしい人だかりとなった。どんな大角力でも、どんな見世物でも、この早朝これ程の人を集めることは出来ぬ。しかも、群衆は、刻一刻、増すばかりだ。
警官隊は、裏手の風船繋留所へと集合した。
そこに、繩を巻き取る、大きな車の様な道具が据つけてある。
数名の警官がその両端にとりついて、ヨイトマケ、ヨイトマケ、車を廻す。一寸、二寸、一尺、二尺、空の風船は、巻取る繩に引かれて、徐々に下降し始めた。
それに気づいた、表側の群衆は、嬉しがって、「ざまあ見ろやーい」