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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
彼が探偵小説作家であることは、家主も近所の人達も、まるで知らなかった。
少しもつき合いをしない、いつも戸を閉めて、家にいるのかいないのか分らぬ、独身の変り者ということが分っていたばかりだ。
「それは、池袋の非常に淋しい場所にある、一軒建ての小住宅なんですが、家の中を検べて見ると、まるで化物屋敷です。押入れの中に、骸骨がぶら下っている。机の上には、人形の首が転がっている。その首に、赤インキがベタベタ塗ってある。壁という壁には、血みどろの錦絵が張りつけてある。といった具合です」
「ホウ、面白いですね」
明智は熱心に合槌を打つ。
「本棚の書物はといえば、内外の犯罪学、犯罪史、犯罪実話といったもので埋まっている。……机の抽斗には、書きかけの原稿紙が沢山入っていましたが、その原稿の署名で、黒虹という変なペンネームが分ったのですよ」
「僕は黒虹の小説を読んだことがあります。非常に変った作家だとは思っていました」
「あいつは、生れつきの犯罪者なんです。その慾望を満たすために、恐ろしい小説を書いたのです。それが、小説では満足出来なくなって、本当の犯罪を犯す様になったのでしょう。