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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「その、後悔してもおっつきませんよ。といったのは、どういう意味だと思ったか。殺してやるぞと、短刀でも握っている様子だったか?」
予審判事が、尋ねると、女中は、
「そうの様にも、思えました」
と答えた。
「こういうことがあったのです。つまり、辻褄が合っているのです。この殺人事件には、動機もあり、その意志もあったと、見れば見られるのです」
三谷が絶望の身振りでいった。
恒川氏は慰める言葉を知らなかった。どう考えて見ても、すべての事情が、倭文子の犯罪を語っている。これでは逃れる道がない。女の身で、ちょっとあり相もない事だけれど、物のはずみは恐ろしい。ふとした口論が、思わぬ犯罪をひき起すのは、間々あること、女とて、恋には、男も及ばぬ暴挙をあえてするものだ。
彼等は、暫く黙り込んでいた。三谷は三谷の物思いに、恒川氏は恒川氏で別のことを。
別の事というのは、さっき明智が受取った、賊の予告状と、それと申し合わせた様に突発した、この事件とを、如何に結びつけるかであった。全く聯絡がない様にも見える。また、何かしらつながりがなくてはならぬ様にも思われる。
それにしても、唇のない怪物と、彼奴に狙われた倭文子とが、同類だなんて、そんな馬鹿なことがあるだろうか。