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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

べッドを降りて、態々卓上電話まで歩いたのだ。自身電話口へ出なければならぬ程の、用件があるのかしら。

「モシモシ、恒川さんですか。歯型をくらべて見ました。ピッタリ一致します。あれが倭文子さんの歯型なら、倭文子さんこそ、我々の探している怪賊だという、妙な結論になります」

「本当ですか」恒川氏はびっくりして叫んだ、「僕には何だか信じられん。どっかに間違いがあるような気がしますね」

「僕もそう思うのです。あれが倭文子さんの歯型だという証拠は?」

「三谷君の証言です。キッパリいい切ったのです」

「三谷君がね」

明智はそういって、暫く考えている様子だったが、やがて、

「ところで、そこにシグマという飼犬がいる筈ですね。あれはまだ犬小屋につないでありますか」

恒川氏はギョッとした。今その犬の死骸を見たばかりではないか。明智は何という怖い男だ。

「今朝鎖を解いたのだ相です。しかし、その犬は、いつの間にか、誰とも知れず、殺されているのです」

「エッ、殺された。どこで?」

明智は何故、そんなに驚くのだ。

「庭の隅にころがっているのを、今僕が発見した所です」

「アア、恐ろしい奴だ。そいつを殺した奴が真犯人ですよ。