轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
子供が、とうとう耐え難くなって、それをいい出したのは、決して無理ではない。
「ほしいといっても、ここにはなんにもありはしないわ。いい子ですわね。今に、今に、天国へ行けば、どんなおいしいお菓子だって、果物だって、どっさりありますわ。もう少しの我慢よ」
「そんなものじゃないの」
茂は怒った様な調子である。
「でもお腹が減ったのでしょう。喉が渇いたのでしょう」
「ウン、あのね、母さまのお乳のみたいの」
茂ははずかし相に、やっとそれをいった。
「マア、お乳なの。……母さま、笑いはしないことよ。いいとも。さあお上り。少しはひもじさを忘れるかも知れないわね」
狭い真っ暗な棺の中で、頭や肩をゴツゴツぶっつけながら、茂はやっと母の乳房にすがった。
彼はまだ、乳の飲み方を忘れてはいなかった。乳頸を柔かい舌で巻つけて、チュウチュウと、出もせぬ乳を、おいしそうに吸い始めた。そして、一方の手では、あいている方の乳房を、クネクネとひねくり廻しながら。
倭文子は、久しく忘れていた、両の乳房の物なつかしい感触に、ふと夢見心地になって、現在の恐ろしい境遇も打忘れ、我子の背中を撫でさすりながら、低い悲しい声で、昔々の子守歌を歌い出した。