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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

警部はそれを拾って、井戸の外へ、投げ上げた。

その下は、読者も知っている通り、三谷青年が倭文子を隠す時に、投げ入れた二枚の蒲団だ。

「ちょっと、手伝って下さい。大変な蒲団だ」

井戸の底から恒川氏の声が響いて来る。

それを聞くと、明智の指図で隅にたたずんでいた二人の怪人物が、井戸の口へ近づき、警部が下からさし出す蒲団を、一枚ずつ、引上げた。

さて、蒲団の下に何があったか。

それが二人の人間の死骸であることは、さっきからのお芝居で、恒川氏にもよく分っていた。一人は小川正一に極っている。だが、もう一人は? あの醜い小人島は、小川の下手人は、一体全体何者であろう。彼はそれが一刻も早く確めたいのだ。

警部は、井戸一杯に斜めになった、梯子の下段に足をかけたまま、懐中電燈をさしつけて、底を覗いた。

「ワッ」

という叫び声。

さすがの警部も、びっくりしないではいられなかった。

「どうしたんです」

上の暗闇から明智の声、彼も井戸の中をのぞき込んでいるのだ。

「これだ。……」

警部は懐中電燈を、一層底に近づけて見せた。

死骸を見るのは、覚悟の前だ。しかし、こんな風な死骸だとは、誰しも想像しなかった。