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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
三幕目
その有様は、さっきお芝居の第一幕でお目にかけた通りです」
「では、その宝石を盗みに来た同類というのは、……」
恒川氏が、思わず口をはさむ。
「そうです。小川正一です。無論偽名ですが、あいつこそ、首領を裏切った憎むべき曲者だったのです」
三幕目
「畑柳庄蔵が、悪人だと知っていたけれど、人殺しまでやっているとは意外でした。しかし、それにしても、腑に落ちないのは、お説の通り、今度の犯人が畑柳だとすると、彼はどうして、我子を誘拐して、身の代金を要求する様な、ひどいまねをしたのでしょう。その辺の心理に、大きな矛盾があるような気がしますね」
恒川氏がいぶかしげにたずねた。
「そこです。今夜のお芝居の第二幕目は、その点をハッキリさせるために、実演してお目にかけたのです。ごらんになった通り、畑柳は、もう一人の奴に殺されました。あの男を、一体何者だとお思いですか」
「分りません。ただ、そいつが、眼鏡をかけ、マスクをはめていた奴らしいという外には」
警部はさっき実演されたことを、そのまま答える外はなかった。唇のない男を代表する小さな黒い奴は、マスクの人物に殺されたのであった。
「では、その人物をお目にかけましょう。