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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
二郎君の恋がどんなに熱烈であったか、したがってその失恋が如何に惨澹たるものであったかということを知るに及んで、僕は悟るところがあった。倭文子さんの生涯に、他人の恨みを受けたことがあるとすれば、この谷山二郎君の外にはない。倭文子さんは、一度は同棲までした二郎君に、可成り残酷なしうちをした。あの人は、今になってそれをひどく後悔している程だ。……
ちょっとでも疑わしい人物は、一人も漏らさず研究調査して見るのが、僕のやり方だ。僕は信州へ人をやって、二郎君の家庭を調べさせ、この写真まで手に入れた。二郎君の一家は皆死に絶えて、残っているのは、少年時代に悪事を働いて家出をした弟の三郎だけだということが分った。僕はその三郎の写真顔を一目見ると、あらゆる秘密が分った様な気がした。年齢こそ違え、三郎の写真顔は、三谷君、君と全く同じだったからだ……」
三谷の谷山は、深く深くうなだれて、物をいう力もなかった。警部がはがい締にしていた手を離すと、ヘナヘナと床の上へ、へたばってしまった。明智の推理が恐ろしい程図星をさしていたからだ。
「アア、君は、犯した罪の数々を認めたのだね。