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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
「ア、貴様……だが、そんなことはない。そんな馬鹿なことがあるものか」
彼は、なぜか花氷の方を見ぬようにして叫んだ。
「ハハハハハハ、僕のお土産の意味が分ったらしいね。ホラ、君は氷柱を見ることが出来ぬではないか。閉じこめられている倭文子さん達を、よく見るのが、君はこわいのだ」
事実、谷山はそれをこわがっていた。彼は真青になって叫んだ。
「いってくれ。本当のことをいってくれ。君は一体何をしたのだ。君の土産というのは何だ」
「僕の口からいうまでもなく、君がちょっと、その花氷へ近づいて、中の人間を調べて見ればいいのだ」
「それじゃあ君は、あれが、倭文子と茂でないというのか」
谷山は脇見をしたまま、うつろな声でたずねた。
「ウン、倭文子さんと茂少年ではないのだ」
明智がキッパリとどめをさした。
「違う、違う。おれはそんな馬鹿気たことを信用する訳には行かぬ」
谷山は、みじめに、だだをこねた。
「見たまえ。氷の中をのぞいて見たまえ。よく見れば、すぐ解るのだ」
谷山は、額にあぶら汗を浮かべながら、必死の気力で、ヒョイと氷柱を振り向いた。そして、血走った目を氷の中の母子の裸体像に釘づけにした。