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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
回復すると、敵を討ちそくなった激怒が、彼を狂気させてしまった。彼はとっさの間に、恐ろしい最後の手段を考えついた。
谷山は部屋の隅へ走って行って、そこの小机のひきだしから、いざという時の用意に、丸をこめておいた小型ピストルを取出し、その引金に指をかけて、一同の前へ戻って来た。恒川警部も、このとっさの行動を阻止する暇がなかった。
「手を上げろ。モソモソすると、ぶっ放すぞ。おれが人の命なんかなんとも思っていないことは、君達もよく知っている筈だ」
一同手を上げる外はなかった。
「ワハハハハ、明智君、流石の名探偵も、馬鹿馬鹿しい失策をやったものだね」
谷山は油断なくピストルの筒口を左右に動かしながら、小気味よげにちょう笑した。
「倭文子の生きた姿を見て、このままおれが、ノメノメとお繩を頂戴すると思っているのか。おれはやっぱり負けたのではない。倭文子の命はおれのものだ。ピストルであっさり打ち殺すのは、少し物足らぬが、この場合仕方がない。サア、邪魔立てすると誰であろうと容赦はせぬぞ」
ねらう一人と、ねらわれる一団とは、互に相手から目を離さず、ジリジリと部屋の中を半周した。