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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
五人とも、このまま命を奪われてしまうような、恐ろしい機械仕掛けが、どこかに用意されているのではないだろうか。
薄暗い電燈、黒い水をたたえた奇妙な池、機械の作る複雑な隠影、ろう人形の巨大な花氷、部屋にみなぎる身を切るような冷気などが、人々をおびえさせた。
「ハハハハハハ」
恒川警部が頓狂に笑い出した。その声が高い天井にこだまして、異様にひびいた。
「馬鹿野郎、あいつ我々をとじこめておいて逃げる積りだろうが、工場の外には、表にも、裏にも、厳重な見張りがついている。奴さん、今頃はもう刑事の誰かにつかまっている時分ですよ」
「僕もそう思うのだが、しかし……」明智は何か少し不安らしい調子で「兎も角、僕等はこの部屋を出なければ、あいつが出て行ってからもう大分時間がたった」
「僕におまかせなさい。こんなドアの一枚位」
恒川氏は、威勢よくドアにぶつかって行った。
ドシン、ドシン、……
部屋が地震のようにゆれた。
そして、三度目の体当りで、ドアの鏡板がもろくも、メリメリと破れた。
破れたかと思うと、その穴から吹き込む風と共に、人々は異様な臭気を感じた。物の焼ける匂いだ。
「オヤ、あいつ、ひょっとすると、……」