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きゅうけつき
吸血鬼
江戸川 乱歩
「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页
明智が思わずつぶやく。
ドアが開かれた。五人のものは、一かたまりになって、次の機械室へ走り出た。
「畜生め、ここにもカギをかけて行きやがった」
恒川警部は、機械室の出口のドアに走り寄って叫んだ。
またしても、体当りだ。恐ろしい音を立てて、二三度部屋がゆれたかと思うと、ドアは蝶交いから離れて、外の廊下へ倒れてしまった。
倒れると同時に、アア、やっぱりそうだ。黄色い煙が、モクモクと室内へ侵入して来た。火事だ。谷山は工場に火を放ったのだ。
鋭い女の悲鳴が起った。そして、ワーッと泣き出す子供の声。茂少年だ。
明智と恒川氏とは、狭い廊下へ踊り出した。見ると、廊下の向うには、うずまく毒煙を隔てて、チョロチョロと、赤黒い焔が隠顕している。
だが、外に逃げ道はない。この廊下を突き切るばかりだ。
「早く、早く、ここを走り抜けるのです」
恒川氏が叫んで、先頭に立った。
倭文子の手を取る文代、泣き叫ぶ茂少年を抱き上げた明智小五郎という順序で、火焔に向って突進した。
アア、あぶなかった。彼等が製氷室で、ほんの少し躊躇していたら、無事に逃げ出すことは出来なかったに相違ない。