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きゅうけつき

吸血鬼

江戸川 乱歩

「報知新聞夕刊」1930(昭和5)9月30日~1931(昭和6)3月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,554 字 · 381 页

青空文庫

名探偵

表の門、裏の塀外に見張りをしていた二人の巡査に尋ねても、誰も家から出たものはないとの答えであった。

見張りはそのままに続けさせて置いて、附近の電話で、応援の警官を呼びよせ、その夜から翌日にかけて、邸内は申すに及ばず、両隣の庭までも、残す所なく捜索したけれど、犯人は勿論、たった一つの足跡さえも発見することは出来なかった。

怪物は不具者の身を以て、どうして一丈もあるコンクリート塀を乗り越すことが出来たか。(附近には足場になる様な電柱も立木もなかった)また、邸内で、恒川氏と三谷とに、はさみ撃ちになった時、一瞬の間にどこへ身を隠し得たか。その様な隠れ場所は一つもなかった。更に、明かに地下室へ姿を消した怪物が、どうしてそこにいなかったか。凡て、全く、解き難い謎であった。

名探偵

不思議は、青山の怪屋で、唇のない男が、三たび消失せたことばかりではなかった。

同じ日の夕方、突然畑柳家を訪ねた、小川正一とは抑も何人であったか、彼はなぜ無断で故畑柳氏の書斎へ入り、内側から戸締りをしたか、誰が彼を殺したのか。その下手人は、戸締りした部屋から、どうして逃出すことが出来たか。