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あいこくしんわたしはこうおもう

和人は舟を食う

知里 真志保

知里真志保『和人は舟を食う』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『愛国心』私はこう思う、あの世の入口、生きているコタンの銅像、おば金成マツのこと、金成マツとユーカラ、学問ある蛙の話、言語と文化史、洞爺湖の伝説、日本語とアイヌ語の関係、図書館通い、アイヌ語学、アイヌ語のおもしろさ、アイヌ宗教成立の史的背景、ホッキ巻。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,567 字 · 144 页

青空文庫

三 風鎮めの呪法としての演劇

すると、まもなく、赤ん坊は安らかに呱々の声をあげて生れるものだったということであります。

ところで、最初の男が手に持った犬の食器というのは、幅約26センチ、長さ約2メートル60センチの、丸太を二つ割にして手彫した舟型の木器であります。最初の男がこれを手にしたのは、もちろん犬に扮するためであり、犬に扮するのは、犬は産の軽い動物であるから、それにあやかるためであります。つまり、犬の孫娘とあれば、お産も軽くてすむ筈だからであります。

また、第二の男が、細めに開けてあった戸をいっぱいに開いて戸外に飛出したのは、アイヌ語で子宮を“ポ・アパ(po-apa 子の・戸口)と呼んでいることでも知れる通り、お産とは、赤ん坊がそのいわゆる“子の戸口”の戸を押し開けて出て来ることだと考えていたからに他ならないのであります。

このような、いわゆる模倣呪術にもとづく原始的な演劇が、古く風鎮めの呪法としても行われていたことは、江戸時代の文献が、明らかにそれを伝えているのであります。

三 風鎮めの呪法としての演劇

『津軽紀聞』という本があって、高倉新一郎氏によればそれは今からおよそ二百年近くも前の、宝暦8年(西紀1758)の著述と推定されるものでありますが、その本の上巻に、松前蝦夷地の風俗の聞書として、“日和もふし”という行事の記事が見え