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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
二人は唇を合せたまま、ベッドの上に倒れた。
「あ、それだけは堪忍して……」
「どうして……?」
「あたしこんなこと始めてなのよ」
しかし、もだえる動作がかえって体をしびらせたのか、娘はもう信吉のなすがままになっていた。そして、
「後悔しないわ。あなただから後悔しないわ。あなたが好きだから。好きだったら悪いことじゃないわ」
夢中になって叫んでいたが、ふと眼をあげると、
「あたしを笑わない……?」
「笑わない」
「だったらいいわ。――名前きかせて頂戴!」
「須賀信吉……」
「須賀さん! 須賀さん!」
「え、何……?」
「何でもないのよ。ああ、須賀さん――須賀さん!」
と、信吉の名を呼びつづけていた。
やがて、信吉は暗がりの中でマッチをすって、時計を見た。四時であった。灯をつけて、
「出掛けなくっちゃいけない」
娘はベッドの隅へ身をすくめながら、うなずいた。
身支度が済むと、娘の方が先に出て行きかけたが、いきなり振り向くと、唇を突き出した。軽くそれに触れて、二人は部屋を出た。
そして、並んでホテルを出ると、雨であった。……
銀座通を歩きながら、信吉は、
「平凡と言えば平凡だが、平凡でないと言えば平凡でない」