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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

第十二章

許嫁気取りの男への反撥心と、好奇心がさせた火遊びに過ぎない。むろん、信吉を好いていた。だから、身を任せたのだが、はっきり恋をしていると自覚する余裕もなかったが、やはりもう一度会いたさに、途中で汽車を降りた。肉体のつながりが、伊都子にそうさせたのだろうと、信吉は女の生理があわれだった。恋ではないかも知れないが、しかし、これが恋だと言って、果して言い過ぎだろうか。この火遊び的な娘にも、それ相応の恋があるのだ。涙! 信吉には、それがふとあわれだった。

しかし、伊都子をあわれむということと伊都子がいてくれては困るというエゴイズムとは、信吉のような男にとっては、大した矛盾ではないのだ。

そして、更に驚くべきことには――

あわれだと思い、そして、いてくれては困るという女の腋臭のにおいを嗅いだ途端信吉はいきなり醜い本能にかられたのだ。

しかし、まず、もう一本煙草を吸った。

「あ、待って」

伊都子がピンを気にして、そう言ったからである。

第十二章

スタンドの灯を消さなかったこと。

みごとな登場人物!

受付の女の電話の声に魅力を感ずること。

よせばいいのに!

夜が更けていた。