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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
が、ふと箸をとめた。
「何を考えてらっしゃるの……?」
「女って一皮むけば、みんな古いものだ、――ということを、ちらと考えたんだ」
「どういう意味……?」
冴子はきいたが、信吉は答えられなかった。信吉は、こんなことを考えていた。
「……おれはこの女を誘惑した時、こうして一緒に汽車にのるとは、夢にも考えていなかった。が、こんなまずい弁当を作ってくれたら、おれはもうこの女を東京へ追い返すことは出来なくなった。もしかしたらこの女は一生おれの傍にいるのかも知れない。おれは毎日この女を追い出すことを考えるだろう。しかし、気の弱いおれはそれを口に出すことは出来ないだろう。そして、この女は一生おれの傍にいる。今日捨てられるか、明日捨てられるかと、ひやひやしながら、結局一生いることになる。これが人生だ」
これが人生だとは大袈裟な言い方だが、しかし、新聞の暗号よりも、やはり冴子の旅行鞄の安っぽさの方がはるかに人生的だった。そして、この感じは汽車が大阪に近づくにつれて、ますます強くなって来た。