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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

丁寧な言い方をした。

「ええ」

「僕も両親はないんです」

これが二人の最後の会話だと、信吉は思った。そして瞬間心が通ったと思った。

食事が済むと、伊都子は帰る支度をして四階に上って行った。

信吉はロビイの新聞を読みに行った。昨日と同じ新聞の綴りを取ってみると、やはり活字に赤鉛筆の印がついていた。辿って行くと、

午後八時、三三三号室……。

と判読された。

「またしても三の数字か。よし、今日は必ず午後八時になぞの女を訪問してやろう」

信吉がそう呟いていると、

「新聞があきましたら、どうぞ……」

声を掛けられた。

見上げると、昨日と同じ中年の紳士がにやにやしながら立っていた。

「どうぞ」

と渡して、

「――午後八時、三三三号室ですよ」

そう言うと、紳士は、

「あ、そうですか、じゃ、もう読む必要はありませんな」

と言った。

「同感です。死亡広告以外には真実の記事は一行もないんですからね、近頃の新聞は……」

「あはは……。巧いことをおっしゃる。しかし、あなたはまだ信用し過ぎている」

「どうして……?」

すると、紳士は厳粛な調子で、

「死亡広告にも嘘がある」

「例えば……?」

「例えばですか。