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よるのこうず

夜の構図

織田 作之助

「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页

青空文庫

「僕があんまり見るから……?」

「そうよ。あたし人に顔を見られると、すぐ照れちゃうの」

「それでよく女優になれたね」

「舞台じゃ平気なんだけど……」

そしてまた笑いだすと、

「あたし、失礼するわ」

と、起ち上った。

信吉は、やられたという感じだった。

しかし、引きとめる気はしなかった。

「じゃ、下まで送ろう」

冴子は帽子をかぶった。

「マッチありがとう」

「え……? ああ……」

ふっと笑って、

「――もっとお話したいんだけど、今日はだめ。照れちゃっていたたまれないの。ごめんね」

「照れて帰るんならかまわないけれど……僕がいやで帰るんなら辛いね。蛇蝎の如くきらったんじゃない……?」

「きらいだったら、来ないわ」

「それで安心した……」

と信吉はドアをあけかけたが、ふと振り向くと、じっと冴子を見つめた。

冴子は信吉の体と殆んどすれすれに立っていた。

眼と眼とが触れ合った。

信吉はいきなり両手を伸ばして、冴子の肩にのせた。

冴子はじっとしていた。

「僕が悪い男に見える……?」

「どうして……? いいひとよ。あなたは……」

「いいひとだって……?」

信吉は笑って、

「――じゃ、ベーゼするのはよした。