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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
実に類型的な田舎娘の扮装だったが、冴子はどうみても田舎娘になり切れなかった。眼が理智的に冴えすぎているのだ。
台本には指定されていなかったが、冴子はその娘が風邪を引いているという新工夫を凝らして、舞台に出て無言でいる間、ゴホンゴホンと咳をしていた。が、それは女学生がエスに慰められようとして、わざと風邪を引いている真似をしている風にしか、見えなかった。
熱心だが、下手なのだ。エスプリはあるが、女優としての才能はないのだ。
しかし、それが信吉には魅力があった。ふと、いじらしかった。
「こんなに魅力のある女だったのか」
と、信吉は何かうろたえてしまった。
仕事を持っている女は(男もそうだが)その仕事をしている時が一番美しい。バスガールはバスに乗っている時が、一番美しいのだ。女給は酒場の外で会うと、興冷めしてしまう。踊っていないダンサーはまるで魅力がない。女優は舞台で見ている時が一番いいのだ。楽屋へ女優を訪問する男は女優の魅力の何たるかを知らない。馬鹿な取り巻き連中のすることだ。
そういう意味で、信吉が今、冴子に思いがけぬ新しい魅力を感じたのは、初日の舞台で女優としての冴子をはじめてみたからだ――と、読者は思うかも知れないが、しかし、信吉はその時、昨日の総稽古で楽屋浴衣を着ていた冴子の姿と、稽古が終って雨の中をわびしく