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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
つまり、あいつだけが買ったんで、むろんそんな変な馬は負けましたがね、あいつは、どうだ、あの馬を買ったのはおれだけだ、と言って喜んでましたよ。そんな奴なんです」
新内語りは、自分をコキユにした親友のことを語るのが、いかにもたのしそうであったが、ふと眉をくもらせると、
「――ところが、突然あいつがあたしの女房と姦通したんです。あたしはその現場を見つけた時、まるで自分の眼を疑いましたよ。女房が姦通したという事実には、そんなに驚かなかったが、その相手が蜂谷だということは、げんにこの眼で見ながら、信じられなかった。人間というものは、あてにならないですね。いや、蜂谷もやっぱし人間だと思いましたね。あたしは二人を殺してしまおうと思った。が、思い直して、もっと残酷に二人をいじめてやろうと思って、考えついたのが、第一ホテルのロビイの新聞の暗号なんです」
「なるほど」
信吉は大体判ったような顔をした。
「普通なら、殺すか、姦通罪として訴えるか、離縁するか、それとも、もう二度としませんと、女房に改心させて、蜂谷とは絶交する――まア、このうちの一つを選んだでしょうが、あたしは、女房に改心させる代りに、ますます姦通させることによって、女房と蜂谷を苦しめる――という方法を採りましたよ。