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よるのこうず
夜の構図
織田 作之助
「婦人画報」1946(昭和21)年5月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,068 字 · 125 页
第十三章
それとも「いいえ」という一言の響きの美しさに、はっとしたのだろうか。
信吉は何か言葉を掛けたかった。
が、ここで言葉を掛ければ、しびれるようなこのなつかしさは、消えてしまうかも知れない。
女の美しさをいつまでも胸に抱いているには、その女と交渉を持たないことだ!
信吉は喫茶室の方へ歩いて行った。これから交渉を持とうとしている冴子が待っている喫茶室へ……。よせばいいのに!
第十三章
大きなホテルが人を気障っぽくさせることについて。
信吉が念の入った欠伸をすること。
二流人の出会い!
ホテルというところは、その大きさに比例して、あるいは人を情慾的にしあるいは人を気障っぽくさせるものだ。即ち、場末か裏街にある小さなホテルは、何か淫蕩的な雰囲気を漂わせているし、第一ホテルのような、まるで道路の延長のような感じの廊下を持った、でかいホテルは、人を気障っぽくさせるのである。
ここでは、人は普通の歩き方をすることはむつかしいのだ。ある者は、書記官長のようにソワソワと歩き、あるものは女官のように歩く、あるものはポーターがいることだけで、もう城門をはいる人間のような優越感を感じてスクリーンの人間の歩き方のように、足が速くなる。