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いかなるほしのもとに

如何なる星の下に

高見 順

「文藝」1939(昭和14)年1月号~1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,508 字 · 236 页

青空文庫

知らなかったものだからと詫びながら、――(今まで、ここで彼女が飲んでいるのを見たことがなかった。)急いで盃を乾した。そしてそれを彼女に回そうとして、ふと何かなれなれしすぎると反省され、

「盃を持ってらっしゃい」

「――あまり飲めないんだけど」

躊躇が来たのか、動こうとしないので、

「おばさん。――盃をひとつ」

台所に声をかけた。

「いえ、あたし……」

立ち上って、細君に、

「――お姉さん、あたし、お酒飲むわ」

訴えるような声だ。

「おや、おや、ミーちゃん。大丈夫?」

「大丈夫ってなアに」

「なんだか知らないけど」

「大丈夫よ」

盃を持って戻って来て、

「お姉さんも、こっちへ来ない。一緒に飲まない?」

「――大変ね」

細君は取り合わぬ声で、

「――あんまり荒れないでちょうだい」

「荒れるかもしれない」

男みたいに言って、今度はしんみりと、だが別に聞かせる調子でなく、

「あたし、なんだか、急に但馬に会いたくなった」

「恋人?」

と、ここで私は戯けた調子で口を挟んだ。

「――ご亭主」はっきり言ってのけた。

「旦那さん、そう、――会ってらっしゃい」

めといった顔をして、銚子をさした。彼女はなんとなく鼻をすすって、こっちの戯けに乗らなかった。