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がくもんのすすめ
学問のすすめ
福沢 諭吉
「学問のすすめ」1872(明治5)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 87,080 字 · 170 页
右所論のごとく、人生の有様は徳義のことにつきても思いのほかに悪事をなし、智恵のことにつきても思いのほかに愚を働き、思いのほかに事業を遂げざるものなり。この不都合を防ぐの方便はさまざまなれども、今ここに人のあまり心づかざる一ヵ条あり。その箇条とはなんぞや。事業の成否得失につき、ときどき自分の胸中に差引きの勘定を立つることなり。商売にて言えば棚卸しの総勘定のごときものこれなり。
およそ商売において、最初より損亡を企つる者あるべからず。まず自分の才力と元金とを顧み、世間の景気を察して事を始め、千状万態の変に応じて、あるいは当たりあるいは外れ、この仕入れに損を蒙りかの売捌きに益を取り、一年または一ヵ月の終わりに総勘定をなすときは、あるいは見込みのとおりに行なわれたることもあり、あるいは大いに相違したることもあり、またあるいは売買繁劇の際にこの品につきては必ず益あることなりと思いしものも、棚卸しにできたる損益平均の表を見れば案に相違して損亡なることあり。あるいは仕入れのときは品物不足と思いしものも、棚卸しのときに残品を見れば、売捌きに案外の時日を費やして、その仕入れかえって多きに過ぎたるものもあり。