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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

三十一

そうしてその一つを鳥が啄いて空洞にしていた。――瓶に挿す草と花がしだいに変るうちに気節はようやく深い秋に入った。

日似三春永。 心随野水空。

牀頭花一片。 閑落小眠中。

三十一

若い時兄を二人失った。二人とも長い間床についていたから、死んだ時はいずれも苦しみ抜いた病の影を肉の上に刻んでいた。けれどもその長い間に延びた髪と髯は、死んだ後までも漆のように黒くかつ濃かった。髪はそれほどでもないが、剃る事のできないで不本意らしく爺々汚そうに生えた髯に至っては、見るから憐れであった。余は一人の兄の太く逞しい髯の色をいまだに記憶している。死ぬ頃の彼の顔がいかにも気の毒なくらい瘠せ衰えて小さく見えるのに引き易えて、髯だけは健康な壮者を凌ぐ勢で延びて来た一種の対照を、気味悪くまた情なく感じたためでもあろう。

大患に罹って生か死かと騒がれる余に、幾日かの怪しき時間は、生とも死とも片づかぬ空裏に過ぎた。存亡の領域がやや明かになった頃、まず吾存在を確めたいと云う願から、とりあえず鏡を取ってわが顔を照らして見た。すると何年か前に世を去った兄の面影が、卒然として冷かな鏡の裏を掠めて去った。