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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

经历生死关头后,作者用细腻笔触回忆那段病中时光,那些细微的光影与人事,读来既心酸又温暖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,003 字 · 113 页

青空文庫

けれども南画に似た心持は時々夢を襲った。ことに病気になって仰向に寝てからは、絶えず美くしい雲と空が胸に描かれた。

すると小宮君が歌麿の錦絵を葉書に刷ったのを送ってくれた。余はその色合の長い間に自と寂びたくすみ方に見惚れて、眼を放さずそれを眺めていたが、ふと裏を返すと、私はこの画の中にあるような人間に生れたいとか何とか、当時の自分の情調とは似ても似つかぬ事が書いてあったので、こんなやにっこい色男は大嫌だ、おれは暖かな秋の色とその色の中から出る自然の香が好きだと答えてくれと傍のものに頼んだ。ところが今度は小宮君が自身で枕元へ坐って、自然も好いが人間の背景にある自然でなくっちゃとか何とか病人に向って古臭い説を吐きかけるので、余は小宮君を捕えて御前は青二才だと罵った。――それくらい病中の余は自然を懐かしく思っていた。

空が空の底に沈み切ったように澄んだ。高い日が蒼い所を目の届くかぎり照らした。余はその射返しの大地に洽ねき内にしんとして独り温もった。そうして眼の前に群がる無数の赤蜻蛉を見た。そうして日記に書いた。――「人よりも空、語よりも黙。……肩に来て人懐かしや赤蜻蛉」