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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
「ハイ、きっと見分けられるでございましょう。たった一度でしたが、奥様があんなに隠していらっしゃる方かと思うと、いくら年寄りでも、やっぱり気を附けて、胸に刻み込んで置くものでございますよ」
老婆は歯の抜けた口をすぼめて、ホホホと笑うのであった。
「で、その男は泊って行くこともあったのかね」
「イイエ、一度もそんなことはございません。わたしがお使いから戻るまでには、きっとお帰りになりました。ですが、その代り、奥様の方が……」
「エ、奥様の方が、どうしたというの?」
「イイエね、奥様の方がよく外でお泊りになったのでございますよ」
「ホウ、そいつは変っているね。で、どんな口実で留守にしたの?」
「遠方のお友達の所へ遊びにいらっしゃるのだと申してね。一晩も二晩もお留守になることが、ちょくちょくございました。どんなお友達だか知れたものじゃございませんよ」
それを聞くと、捜査係長と私立探偵とは、思わず目を見合せた。若しその竜子の外泊の日が、これまでの殺人事件の日と一致すれば、愈々この女を疑わなければならないのだ。
そこで、中村警部は川手氏の二人の令嬢が殺害されたと覚しき日附、その死体が陳列館やお化け大会へ運ばれた日附、それから川手氏自身が行方不明になった日附などを思い出して、それらの事件の当夜、竜子が外泊したかどうかを確めて見る