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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
林助手はけげんらしく呟いたが、呟いているうちにゾーッと背筋が寒くなって来た。やっぱり幽霊だったのかしら。それともあいつは、幽霊よりも不気味な魔法使なのかしら。
「シッ、静かにしたまえ。あいつが聞いているじゃないか」
博士の囁き声を聞くと、「ソレ、そこに!」と云われでもしたように、又ドキンとした。
「どこに隠れているのでしょう」
怖々訊ねると、博士は闇の中でニヤニヤと笑っているらしく、懐中電燈の光で、ソッと天井を指し示した。
「エッ、では、この上に?」
囁き声で聞き返す。
「そうだよ。外に逃げ場所はないじゃないか」
博士は囁いておいて、一方の押入れを覗き込み、懐中電燈でその天井板を調べていたが、オズオズと近よる林助手の腕を掴んで、耳に口をつけ、
「ここだよ。この天井板がはずれるようになっているのだ。……君、勇気があるかね」
と、からかい気味に訊ねた。
林助手は、勇気がないとは答え兼ねた。相手はお化でも幽霊でもない、生きた人間、しかも一人ぼっちで逃げ隠れている奴だ。それを怖がって尻ごみするようでは、探偵助手の恥辱である。
「僕この上へ上って、確かめて見ましょう。