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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

博士は何を失敬なと云わぬばかりに、挑戦的な口調で、闇の中の明智の顔のあたりを、グッと睨みつけた。

明智はたじろがなかった。彼も亦、博士の顔を異様に見つめている。長い間妙な睨み合いがつづいた。中村警部は、後日その折の有様を形容して、二人の目から青白い火花が散るかと怪しまれたと語った程である。

そうしているところへ、鳥居の前に自動車の停車する物音が聞え、捜査課長を初め警視庁の人々が来着し、順序を踏んで、物慣れた現場調査が行われた。暫くすると、検事の一行も駈けつけて来た。そして一応の取調べが終ると、身柄引取人とてもない北園竜子の死体は、一先ず警視庁の死体置場へと運ばれたのであった。

明智小五郎は、調査の終るのを待たないで、先に帰宅したのだが、その帰りがけに、中村警部を人目のない場所に招いて、こんなことを囁いた。

「僕はこの事件にすっかり惹きつけられてしまった。一つ僕は僕で、宗像君の邪魔をしないように、調査をして見ようかと思うのだよ」

「調べると云って、もう主犯が死んでしまって、あとは共犯の眼帯の男を探すばかりだが、君は何か心当りでもあるのかい」

中村警部は、いぶかしげに聞き返す。