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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

「では、参考のためにその論理とやらを聞きたいものですね。事件の最初から、二人の部下まで犠牲にして、目と耳と足と頭を働かせて来た僕の解釈が正しいか、事件が殆んど終ってしまってから、机上に組み立てた君の空想が正しいか、一つ比べて見ようじゃありませんか。ハハハ……」

博士は無遠慮な笑い声を立てて、腕組みをしながら椅子の背に反り返って見せた。

「イヤ、そういう感情の問題はともかくとして、我々としても一応明智さんの論理を承わらなければなりません。若し北園が真犯人でないとすると、この事件は最初からやり直しですからね」

捜査課長も真剣な表情で、明智を促すのであった。

「僕はこの事件の最初からの、常識では判断の出来ないような不思議な出来事を、すっかり、ここに書き出して見たのですがね」

明智はポケットから手帳を取出して、その頁を繰りながら、落ちつき払って語りはじめた。

「この事件に最も異様な色彩を与えたのは、申すまでもなく、例の怪指紋です。犯人はあの指紋を実に巧みに使用して、川手一家の人々に、どれほどの恐怖を与えたか知れません。あの指紋をじっと見ていると、何かこう悪魔の呪いとでも云ったようなものが、ひしひしと感じられますからね。