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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页

青空文庫

三幕目の主役を知っているかね。云うまでもない、君自身さ。真打ちの出番は最後に極っているじゃないか。

復讐者より

この二つの椿事が重なり合って、川手邸は葬儀の夕べとも思われぬ、一方ならぬ騒ぎとなった。

妙子さんは、人々の介抱によって、間もなく意識を取戻したけれど、感情の激動のために発熱して、医師を呼ばなければならなかったし、それに引続いて、葬儀から帰ったばかりの宗像博士が、川手氏の急報を受けて再び駈けつける、警視庁からは中村捜査係長がやって来る。それから川手氏と三人鼎座して、善後策の密議に耽るという騒ぎであった。

犯人は恐らくA斎場の式場にまぎれ込んでいたものに違いない。そして、一方では妙子さんの頬に怪指紋の烙印を捺し、一方では川手氏に接近して、その内ポケットに、掏摸のような手早さで、あの封筒を辷り込ませたものに違いない。

しかし、妙子さんの頬に指型を押しつけるなんて、いくら何でも普通の場合にできる業ではない。これはきっと、告別式が終って、妙子さんが倒れた時のどさくさまぎれに、素早く行われたものであろう。すると、その時、場内に居合せたものは、川手氏の親戚旧知の限られた人々のみではなかったか。