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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
「日の出」新潮社、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 页
轢死者の首
しかし、化物屋敷の考案者は、そこに抜かりがなかった。
「僕の方は開きませんよ。どうしたんだろう」
小池助手が入口のドアを、外からドンドンと叩く音がした。しかし、いっかな開きはしないのである。
仕方がないので、博士は先に鏡の部屋を出て、外の暗闇に入ったが、すると、今まで開いていた隙間が、カタンという音を立て、自然に塞がされてしまった。そして、殆んどそれと同時に、部屋の中から幽かな小池助手の声が聞えて来た。
「先生、どこにいらっしゃるのです。開きましたよ。ドアが開きましたよ」
「出口はここだ。しかし、自然に開くのを待つ外はないのだ。仕方がない、暫くそこに我慢していたまえ」
博士は今出たあたりの壁をコツコツと叩いて聞かせながら、大声に呶鳴るのであった。
轢死者の首
闇の中に佇んで暫らく待っていると、やっと目の前の壁が開いて、小池助手がフラフラと逃げ出して来た。
「驚きました。実にいやな気持ですね。僕は半分は目をつむってましたよ。そうでないと、今にも気が変になるような気がして」
「なる程。これじゃ、みんなが逃げて帰る筈だ。進めば進む程、物凄くなるんだからね」
二人はボソボソと囁き交しながら、またしても壁伝いに闇の中を歩きだした。